WORK

実績

2020.7.10

リビングラボ

「未来をつくるワークショップ」 in 麦田地域ケアプラザ

住民、企業、地域ケアプラザが協力し、子どもの教育に関する課題を共創。参加者が一緒にアイデア創出に関わることで価値のあるつながりも築く。

課題
子育て世代と地域ケアプラザの連携不足。
施策
対話を通じて課題解決アイデアを共創、参加者の関わりを重視。
成果
のべ29名の住民、13名の企業の方、5名の大学生、105名の子どもが参加し、新たな連携と地域のつながりを築く。

開催の経緯

生活者と企業・行政がサービスを共創する場として、私たちは、生活者・企業・行政が自由に対話できるリビングラボ「ともに育むサービスラボ®」(略称:はぐラボ®)を2年半ほど運営していました。主に子育てに関するサービスを検討している企業からの相談を受け、それに沿ったテーマで対話を実施してきました。
その活動には、多くの生活者(未就学児を持つママ・パパ)が参加してくれました。最初は何を話せばよいかわからない状態から、徐々に毎回のテーマについて意見を出してくれるようになり、さらに、普段の生活の中で抱えている自分の課題や悩みも教えてくれるようになりました。子育て中のママ・パパのたくさんの課題や悩みを聴き、私たちは、企業が着目しているテーマだけでなく、生活者が本当に解決して欲しいことをテーマに、関係するステークホルダーを巻き込んで対話する、生活者起点のアプローチも必要だと考えました。

その頃、私たちは「はぐラボ®の活動を通じて、麦田地域ケアプラザの職員の方と出会いました。地域ケアプラザは高齢者の支援をされていると思っていましたが、実は、地域に住むあらゆる世代の方の声を聞き、暮らしやすい地域をつくるお手伝いをすることがミッションだと伺いました。しかし、最近は若い世代の地域との関わりが薄くなってきており、彼らの声を聞く機会をほとんど持てていないという課題を持っていました。そこで、下記の2つを実現するために、地域密着型のワークショップを共催することにしました。
➢ 対話を通じて地域の若い世代の課題・ニーズを聞き出し、本質的な課題を発見する
➢ 地域住民と地域ケアプラザが一緒に解決策を検討することで、両者の信頼関係を構築するとともに、持続可能
な地域活動をつくる

さらに、この活動に共感いただいたある大手建設会社も、企業参加者として参加してくださることになりました。

ワークショップの設計

これまでの私たちの経験から、住民や多様な関係者を巻き込んで行う共創活動を成功させるためには、ゴールの設定、住民参加の働きかけ、参加者の相互理解の3つが重要だと考えました。そのため、活動の設計にあたり、様々な工夫を施しました。

➢ ゴールの設定:

計画する前に、麦田地域ケアプラザと建設会社に対してそれぞれの課題や活動への想いをヒアリングし、3者で議論を重ね、共通のゴールを設定しました。

➢ 住民参加の働きかけ:

今回対象とした地域住民は、年中~小学校低学年の子どもを持つ世代であること、また、比較的生活に余裕のある層が多い地域であることから、おそらく「子どもの教育」への関心は高いと考えられました。そこで、対話のテーマを「子どもの教育」とし、ワークショップの内容を検討しました。さらに、子どもにも楽しんでもらえるように、未来に必要な「協調性」「思考力」「運動力」「表現力」に関する体験型ワークショップを同時開催とし、親子で楽しく出かけられるイベントにしました。

➢ 参加者の相互理解:

参加者一人一人がそれぞれのものの見方や考え方を伝え、互いを知るプロセスを重ねることで、考えたことを素直に発言し、認め合えるクリエイティブな場が徐々にできていきます。住民との対話の場面では、全員で円になって自己紹介を行ったり、ケアプラザや企業の参加者が、組織の立場からだけではなく、一生活者の立場から住民と一緒に課題や悩みを共有したりするように設計しました。

また、デザイン思考のプロセスを実践するため、対話を4回にわけ、以下のような構成にしました。

開催内容

地域住民、地域ケアプラザの方、企業の方が参加する4回の対話会は、それぞれ下記のように行いました。

第1回:課題を発見しよう

子どもの教育についてどのような悩みや課題を持っているか、できるだけ広く住民の声を収集しました。ワークショップに慣れていない方でも様々な観点から考えられるようにするために、2つのカードを用意しました。1つは今回のテーマに関連する社会全般や麦田地域の特徴・課題をまとめた「地域や社会の変化の兆し」カード、もう1つは「子どもに求められる能力」カードです。ワークショップでこれらのカードを使いながら、最近のトレンドから10年-20年後の社会を想像し、子どもの能力を伸ばしていくためにどんな不安や悩みがあるかをみんなで話し合いました。

第2回:アイデアを考えよう

1回目のワークショップで収集した住民の意見を持ち帰って整理し、麦田地域ケアプラザと大手建設会社との共通ゴールを考慮した上で、2つのテーマを選定しました。

参加者がアイデアを考えやすいように、「テーマのブレイクダウン」カード、「地域のリソース」カード、技術カードを用意しました。参加者は自分の関心の高い方のテーマの対話に参加し、カードを活用しながら、課題を解決するためのアイデアをたくさん考えてくれました。

第3回:実現方法を具体化しよう

第3回を実施する前に、みんなで出したたくさんのアイデアを整理し、3つの取り組み案に集約しました。それぞれの案の内容をわかりやすく伝えるため、生活者の視点に立った体験ストーリーを作り、ストーリーボードを作成しました。

<ストーリーボードの例>

ワークショップ当日、用意したストーリーボードを紹介し、それぞれの案についてブラシュアップを行いました。その際に、自分たちが参加したいと思うような「ワクワク感」を重視してもらいながら、具体的にどのように実現したらよいか考えていただきました。
今回の取り組みの直前に発生した大型台風19号の影響もあり、災害時における子ども自身のサバイバル力の育成と周辺の支援について、かなり高い関心が寄せられていました。

第4回:みんなで話そう

第4回を実施する前に麦田地域ケアプラザと大手建設会社で話し合い、アイデアのブラッシュアップと、そのアイデアに対してそれぞれがどのように貢献できるかを考えました。その結果、3つの取り組みを1つのイベントとして集約できる可能性が見えてきたので、そのイベントのコンセプトを伝えるチラシを1枚つくり、具体的な実施内容の案を作成しました。
最終回で、住民のみなさんにそれらを発表し、参加したいと感じたものに投票していただきました。また、実行するなら企画から関わりたい、準備を手伝いたいなど、住民のみなさんがどのような関わり方で参加したいかについても、意見をもらいました。

開催の結果

4回の対話には、のべ29名の地域住民、13名の企業の方、5名の大学生が参加してくれました。また、子どものワークショップには、のべ105名の子どもが参加し、各回とも大変賑やかなイベントとなりました。

<第1回:秘密基地づくりの様子>

<第2回:ロボットと仲良くなろうの様子>

<第3回:楽しく身体を動かそうの様子>

<第4回:クリニカルアートを体験しようの様子>

今回の対話では、住民の声にきちんと耳を傾け、参加者全員で意見を出し合うことによって、住民たちが心から参加したいと思える、地域ケアプラザや企業が心から支援したいと思える活動案を創出することができました。
さらに、イベントの計画の段階から参加したい、開催の準備や当日の運営を手伝いたいと手を挙げてくれた住民も多数いました。このような地域住民と地域ケアプラザのつながりができたのは、イベント開催以上に価値のある成果だと感じました。

<地域住民からのコメント>

「子どもが全部のイベントを楽しみました。ありがとうございました。絵の先生の子どもたちへの愛情が深くて泣きそうになりました。そして、まさか大人の時間があるとは。子どもと離れて色々話せて楽しかったです!」(小2のお子さんの母親)

「子どものワークショップでは、普段家等でやらせてやれない規模の工作をさせてもらえてよい機会になりました。親の予想よりもはるかに、自由な構想/アクティビティができてよかったです。対話では、自分の抱えている疑問や課題も洗い出せて良かったです。」(年中のお子さんの母親)

「対話でこれまでの意見を集約して、最終的に実施可能な案に仕上げていく過程を体験でき、有意義な時間でした。子どももとてもうれしそうに作品を持ってきてくれました。自宅ではなかなか作るのが難しそうな立派な作品が短時間で仕上がり、親の私もびっくりしました。」(年長のお子さんの母親)

<麦田地域ケアプラザの職員の方からのコメント>

「はぐラボ®」を初めて見学させていただいたとき、参加されているママ・パパが抱える課題や悩みを聞きケアプラザとしてとても参考になったと共に、課題を解決するためのアイデアがたくさん出ていたこと、参加者が楽しそうにアイデアを出し合っていたことに感動しました。
ケアプラザはどうしても“高齢者を支援するところ”というイメージが強い中で、本来は地域全体をサポートする機関であることを住民の方にアピールする必要があると考えています。NTTテクノクロスの皆様はケアプラザの機能や職員の想いを的確に理解してくださり、今回の企画が実現しました。
対話の時間では、ママ・パパだけでなく学生・企業の皆様の柔軟な発想で、素敵なイベントの案が出てきました。さらに、支援者側が企画して住民が参加する、という一方的なものではなく、皆さんが積極的に「参加したい!」「手伝ってみたい!」と思えるイベントにしたい、という思いをNTTテクノクロスさんや企業の方々と共有させていただきました。ケアプラザだけではこの柔軟な発想を引き出すことは難しく、貴重な対話の場をいただいたことで、つながりを作るきっかけになりました。
また、お子さんを対象にしたワークショップも毎回好評で、子どもたちが生き生きと、新しい経験ができる場を提供できたことも、ケアプラザとして大きな成果でした。
未来をつくるワークショップには、様々なエリアからのご参加がありましたが、ケアプラザの近くにお住いの方から「子供に対して、“何か危険を感じたときにはケアプラザに行けばいいんだよ”と教えています。職員の方と顔見知りになれる良い機会だと思って参加しました」とお話をいただきました。ケアプラザは地域のみなさまにとって身近で、頼れる居場所であってほしいと思っています。未来をつくるワークショップを通じて、住民の方々とケアプラザのつながりをさらに深められたのではないかと感じます。

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