WORK

実績

大型ショッピングモールにおけるサインのリデザイン(三菱地所様)

ランドマークプラザ館内の案内・誘導サインをリデザインした。

課題
「よりわかりやすいサイン」をデザインするために来館者はどのように館内を歩き、サインを活用し、どんな時に迷ってしまうのか調査する必要があった。
施策
現状調査、類似商業施設の調査・分析、ユーザ調査(行動観察・インタビュー)、関係者インタビュー、方針決定ワークショップを実施し、サインデザイン案を作成し、現場におけるプロトタイプ評価を行った。
成果
ユーザ評価に基づいたランドマークプラザ館内の誘導サインおよび案内サインのデザイン案、設置位置案を策定し、2022年3月から利用開始。

横浜みなとみらいのシンボル的存在であるランドマークタワー。展望台のあるタワー棟を中心として、オフィス、ホテル、ショッピングモールなど多彩な施設を併設した複合施設です。

三菱地所様より、そのランドマークプラザ館内の案内・誘導サインを全面的に更改するにあたり、来館者にとってよりわかりやすいサインにリデザインしたい、というご相談をいただきました。

ただサインの見た目を綺麗にするのではなく、「よりわかりやすいサイン」をデザインするため、来館者はどんな風に館内を歩き、どのようにサインを活用し、どんなときに迷ってしまうのか、館内でのユーザの行動を観察し、課題を明らかにすることで、来館者にとってわかりやすいサインをデザインすることにしました。

本プロジェクトは、以下の手順で進めました。

1.現状調査

プロジェクト発足時の案内・誘導サインについて、設置されている位置や記載されている情報を確認するため、ランドマークプラザ館内を実際に歩きながら調査しました。
実際に歩きながら調査することで、サインに記載されている情報とその場所で必要となる情報を自分の目で比較することができました。また、何度も館内を歩いていると、来館者はどの通路をよく歩いているかなど、人の導線も見えてきました。

<館内全体を案内する案内サイン>

<目的地の方向を示す誘導サイン>

2.最新商業施設調査・分析

商業施設の特徴によって商業施設を分類し、その特徴を持つ施設を合計10施設ピックアップし、こちらも実際に歩きながら調査を行いました。
複数の商業施設を調査することで、施設の特徴によるサイン記載内容の傾向や、サインへの記載が必須と言える情報/削っても問題がない情報など、サインのデザイン方針のヒントを掴むことができました。また、このフィールドワークにおいて我々自身が来館者となって実際に商業施設を歩いたことで、「どのようにサインを活用するか」といったユーザー行動の仮説を立てることができました。

3.ユーザ調査(行動観察・インタビュー)

1,2の調査結果を踏まえて調査設計を行い、「展望台に上り、そのあと食事に行く」といった来館者の目的としてあり得そうなシナリオを複数パターン作成しました。そしてランドマークプラザに詳しくない人8名にそのシナリオに従って館内を歩いてもらい、目的地に到着するまで、どのような情報を見て、どのように移動するのか、リアルなユーザの行動観察を実施しました。
行動観察の実施途中、およびその直後にインタビューをあわせて行うことで、「なぜその行動をしたのか?」というユーザの行動理由やそのときの気持ちを聞き出しました。我々が想定していなかった行動も、理由を聞くと「なるほど」と思うところがあり、ユーザの気持ちに寄り添い、理解を深めることができました。

<行動観察の様子>

4.関係者インタビュー

3では一般の来館者を想定したユーザにインタビューを行いましたが、普段から来館者と接しているテナントの従業員の方々や、館内案内担当者、警備担当者、ホテルコンシェルジュなど様々な立場の関係者の方にご協力いただき、お話を伺うことができました。
どんなお客様が多いのか、どんなことを尋ねられることが多いのか、といった来館者に関する情報だけでなく、ランドマークプラザの特徴や、今後ランドマークプラザにどうなってほしいか、といった関係者の皆様自身の想いも伺って、「ランドマークプラザ」の理想の姿を具体的にイメージすることができました。

5.方針決定ワークショップ

1から4までの調査結果をもとに、サイン1つ1つの情報・見た目をデザインする前に、全体を統一するための方針を決めるワークショップを行いました。このワークショップは、三菱地所様だけでなく、ランドマークプラザの管理を担当している会社、サインの作成を担当される会社、ホテルの運営会社からそれぞれ関係者にご参加いただき、現状の課題や他施設におけるソリューションなど、これまでに得られた調査結果を皆様と共有し、皆様と一緒に具体的な方針を決めていきました。単なる結果報告ではなく、ワークショップ形式で皆様からの意見を取り入れながら進めることができたので、納得感のあるデザイン方針を固めることができました。

6.サインデザイン

5で決定したデザイン方針に従い、どこにサインを設置すべきか、その場所のサインにはどんな情報を記載すべきかを決めていきます。それぞれのサインには、その場所で提示すべき情報があるため、何度もサインの位置と記載する情報を確認しながら、情報設計を行いました。

<サインに記載する情報の検討資料>

また、記載する情報だけでなく、その情報をパッと見た時にわかりやすく表示することも重要なので、文字サイズや色使いなど見た目の部分に関しても「わかりやすさ」を意識してデザインしました。

7.現場におけるプロトタイプ評価

今回デザインの対象となった「サイン」は、「実際の場所」で評価することが非常に重要でした。なぜなら、「サインを設置するその場所」において必要十分な情報が記載されているかを点で確認することに加えて、人の流れに合わせて連続してサインを見た時に記載された情報に違和感がないかを線で確認する必要があります。さらに、PCの画面上で見た時と、実寸で天井に吊り下げた位置で見た時では、文字のサイズ感など見た目の部分もずいぶん違って見えます。
そのため、記載する情報については何度も現地に足を運んで、点と線のどちらの観点からもチェックを行いました。見た目については、三菱地所様にご協力いただき、実寸で印刷したサインのプロトタイプを実際にランドマークプラザに持ち込んで、天井付近に設置するとサインはどのように見えるか、置き型の場合はどう見えるか、実際の場所で評価することで、サインデザインを一層適したものにブラッシュアップできました。

<実寸大プロトタイプの作成>

<現場でのプロトタイプの評価>

このようにして、新しいサインのデザイン案、そして適切なサインの設置位置案を検討し、三菱地所様にご報告いたしました。
ユーザ調査に基づいたデザインになったことで、「なぜこうなったのか」という点で納得感を感じていただける結果になったと思います。
2022年3月にランドマークプラザのサイン更改は全て完了し、本件でご提案した「よりわかりやすいサイン」が実際に設置され、来館者の皆様にご活用いただいています。

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