公益社団法人藤沢市医師会様(以下、医師会様)は公益性の高い事業を行っており、地域住民の生命、健康を維持するための事業を展開しています。大規模な自然災害や人災が発生した場合において、その機能を維持し、円滑かつ適切な災害医療支援活動を行える体制を整える必要があります。医師会様は自らが被災しても、社会から必要とされる業務を継続することが求められています。

今回、我々は調査・分析・プロトタイプ・テストという、デザイン思考プロセスを使い、医師会様の事務機能の回復に範囲を絞り、事業継続計画の策定を実施いたしました。

事業継続計画とは

事業継続計画(以下、BCP (Business Continuity Plan))は、災害などの緊急事態の際、必要な資源(人、物、情報、ライフラインなど)などが限られている状況下でも、適切な資源の配分を行い、業務の継続と早期復旧を図るために、災害時の行動や、平時の防災計画などを策定するものです。

実施プロセス

実施したプロセスは以下の通りです。

1.業務内容・必要資源の把握(調査)

我々が持つインタビュースキルを用い、医師会様の理事(2名)、事務担当の方(3名)へインタビューを行いました。インタビューを通じ、業務内容の把握、事務業務に必要な経営資源(電気、書類、データなど)、ステークホルダについて把握しました。また、医師会館および周辺の現地調査をおこない、什器・書庫・ICT機器の状況や、周辺の環境・土地の形状などについて確認しました。

2.リスクの想定(分析)

医師会様と議論を行い、今回の災害として、地震と大雨を想定する事としました。
そこでまず、デスク調査を行い、神奈川県や藤沢市が公開している災害シミュレーションデータ、過去に同地域で発生した災害の状況、電気・水道などのインフラ企業の災害復旧に関する情報などの調査し分析を行いました。分析結果より、想定災害が発生した時の医師会館と周辺の状況について、想定を行いました。そして、業務遂行に必要な経営資源の被害を想定しました。

3.BCPの策定(プロトタイプ)

これまでの調査・分析結果を基に、医師会様と議論を行いながらBCPマニュアルを作成しました。
このマニュアルは、災害が起きた時(もしくは、起きそうになった時)に利用するものです。ユーザは非常に焦っていたり、大きな不安を持っていたりする状況下にあるはずです。そのような場合でも分かりやすいよう、自分が担当すべき手順が分かりやすい構成、災害時の作業に必要な関連書類を見つけやすくするなど、利用者の立場にたった工夫を行いました。

4.改善(テスト)

医師会事務担当の方々と、BCPマニュアルの手順が実施できるかユーザテスト(机上訓練)を行いました。テストを実施した事で、作業内容の抜け漏れの発見、報告書類のフォーマットの見直し、実際的な作業分担などの改善を行いました。

今後について

本マニュアルを医師会の中で定着させるための勉強会の実施、実際の行動ができるか確認する災害訓練、物品の耐震対策、防災グッズの増強などをする必要があります。
また、BCPマニュアルは一度策定して終了ではありません。内部環境・外部環境・防災意識の変化など伴い、BCPマニュアルのアップデートし続ける必要があります。そして、そのアップデートをし続けられる組織作りをする必要があります。今後、BCP改善を自走できる組織作りを行っていく予定です。

最後に

災害はいつ発生するか分かりません。BCP策定は、努力義務ではありますが、事業継続をするためには非常に重要です。事業継続のプロセスだけでなく、社員一人一人の防災に対する意識を変える必要もあります。BCP策定プロセスやBCPを通じ、社員の意識改革をする事ができると考えます。

BCPは各企業様の状況(立地・地域における立場・防災対策状況・設備など)により異なるため、1社1社が策定をする必要があります。
我々、こころを動かすデザイン室では、デザイン思考と業務分析などのスキル、多くの案件を通じて得た知見、NTT研究所の研究成果などを組み合わせ、お客様に合ったBCPを策定いたします。BCP策定にご興味のある方はこちらからお気軽にお問い合わせください。